「老けない体を作る発酵食」より抜粋
新たな細胞をつくれない。だから老化する。
細胞は必ずしも生まれた時からずっと同じものが働き続けるわけではありません。体の部位によって、生まれた時からずっと同じ細胞が働き続ける場所と、定期的に新しいものに入れ替わる場所があります。心臓の筋肉をつくる「心筋細胞」は、入れ替わりが非常に遅く、一生かかっても半分程度の細胞しか入れ替わりません。
ですから、心筋細胞が衰えてしまうと、自身の体の能力で再生することはとても難しく、心筋の病気は命に関わることが多いのです。
一方で、皮膚や血液、腸管や胃壁のように、常時、新しい細胞と古い細胞が入れ替わる部位もあります。これらの細胞は寿命が短く、皮膚なら28日程度、血小板で10日、赤血球は120日程度で入れ替わっていきます。こうした場所では、次々に新しい細胞をつくり出さなければなりません。
年をとると、肌に潤いがなくなるのは皮膚の細胞の入れ替わりがスムーズにいかなくなるためですし、傷が治りにくいとか、傷跡が消えないのも、新陳代謝の能力が低下してくるからなのです。
細胞はとても小さく、一つひとつでは与えられた任務を果たすことができません。そこで同じ種類の細胞同士が手をつなぎ、協力し合うために、細胞の棲み家となる「組織」をつくります。骨であればカルシウムを中心とした硬い部分、皮膚であればコラーゲンと呼ばれる柔らかいたんぱく質が組織に当たります。小さな細胞たちはここに入り込むことで、外からの圧力や、引っ張られる力などに対抗しています。そしてこの組織の劣化が、私たちの老化に大きく関与しているのです。たんぱく質は劣化が始まると、変性して硬くなってはがれ落ち、体内の老廃物となります。体にとっては不要なゴミですから、体外へ排出したいところですが、たんぱく質を小さく分解する能力が私たちの体には不足していて、結局はゴミをため込むことになってしまいます。たんぱく質のゴミ(アミロイドβ)がたまることで発症する病気といえば「アルツハイマー病」が有名です。
実際に脳神経細胞が死滅するのは、ゴミの蓄積が始まってから25年も経過してからだといわれています。
細胞の老化や、たんぱく質の変性によって老化は進みます。細胞が老化するときに発生する炎症物質が、周囲の健康な細胞にも悪影響を与えることがわかってきました。この現象は「慢性炎症」と呼ばれます。何より怖いのは、臓器で慢性炎症が起きると、臓器はもとに戻りにくく、老化を早め、病気などを誘発してしまうのです。慢性炎症が起きやすくなる背景には、大きく3つの要素があるとかんがえられます。
◎老化細胞を処理する能力の衰えです。
本来であれば老化細胞は「マクロファージ」と呼ばれる細胞が食べてくれるのですが、加齢によってマクロファージの機能が低下すると、死んだ細胞が体内に残り、その刺激が炎症をあおります。
◎皮下脂肪の機能の衰えです。
若い時は太っても柔らかい脂肪がつきますが、加齢とともに硬い脂肪が増えてきます。実は皮下脂肪の機能が低下すると、脂肪を貯められなくなってしまうのです。そのため余分な脂肪組織は、内臓脂肪となったり、本来は脂肪が蓄積しない肝臓や筋肉、骨髄などにたまるようになります。皮下脂肪以外に蓄積した脂肪を誘導することがわかっており、体のあちこちを老化させる原因となってしまうのです。
◎腸の中に毒素がたまること。
偏った食事や生活習慣の乱れなどから腸内の環境が悪くなると、腸内で慢性炎症が起こります。腸の粘膜には体内を守る免疫細胞が多く集まっているため、アレルギーの原因になったり、腸炎や大腸がんを引き起こしてしまいます。また、腸から始まった炎症は、全身に飛び火するため、全身の臓器の細胞をむしばむ可能性があるのです。
【老けない体を作る発酵食】 中西 雅寛