補(ほ)と潟(しゃ)

「虚(きょ)すればすなわちこれを補う」

「実(じつ)すればすなわちこれを潟す」

と古典にもあるように、

補の治療とは、体力エネルギー等を補う治療のことをいいます。

潟の治療とは、病気の勢いを抑える治療のことです。

これを自動車に例えると、それぞれガス欠とオーバーヒートの問題

になるかと思います。

ガス欠が問題だとするなら、

ほんとうにガス欠だけなのか、ガソリンタンクに穴が開いてガソリン

がもれているのか、ガソリンタンクからエンジンに向かうパイプが

詰まってガソリンがそこにいかない状態なのかを調べなくてはなりません。

オーバーヒートが問題であるとするなら、単純にエンジンの回しすぎに

よるものなのか、そうではなくてそこを流れるオイルが不足して起こって

いるものなのか。さらにその上に電気系統の配線の問題がからんでくると、

いよいよ複雑になってきます。

例えが車であってもこのように細かく見ていく必要があります。

実際の修理はこのように単純ではないのでしょうが、たとえば問題が

オーバーヒートの場合まずエンジンを冷やします。これは潟の治療に相当

します。また、同時にオイルがなくなっているのであれば冷やしてもまた

すぐに熱くなってしまうわけですから、オイルを補給する必要があります。

これは補の治療に相当します。

補と潟の治療というのは、これを単純に区別してそのどちらかだけを行え

ばよいというものではなく、例えの自動車のように故障の原因箇所に応じ

て同時に使い分けていく必要のあるものなのです。

単純に補の治療だけ、潟の治療だけ‥‥ではないのです。

したがって、解熱剤で熱を下げるだけなら、あるいは降圧剤で血圧を下げ

続けるだけなら、あるいは血糖降下剤で血糖を抑えるだけなら‥‥

車でいえば、エンジンを冷やし続ければとりあえず走り続けるでしょう。

しかしそれが根本からよくなる修理といえるでしょうか

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